今や常識となったオンラインでの会議で、日本のコミュニケーションスタイルが海外のスタートアップに誤解を与えているケースが多いということをご存じでしょうか。
新型コロナウイルスがもたらした新しいワークスタイルの大きな変化の1つが、オンラインでの会議やイベントの導入です。オンラインでの会議は効率の良さ、低コスト、参加のしやすさなど、オフラインにはない手軽さがあり、多くの会議で導入されています。
当社が手がけるオープンイノベーションの分野でも、海外スタートアップとのコミュニケーションはほとんどがオンラインの会議で行われるようになりました。しかし手軽なオンライン会議は誤解を生じやすいツールであるということも理解しておくべきです。
最近、我々のオンライン会議で起こった事例を紹介しましょう。日本の大手企業と欧州のスタートアップの間でオンラインでの会議が実施され、我々が進行役のファシリテーターを務めたときのことです。
その会議に日本側のメンバーは各自、自宅から参加していました。その際、オンライン会議の画面に映っていたのは、普段着で、家族の声を時折気にしながら、自らはあまり発言や質問をせず、スタートアップがプロジェクトについて前向きな提案をしても特に反応しない、物静かな男性が数人並んでいる――という状況だったのです。
その上、日本側から自分たちの最新情報を提供することはなく、幾つかの細かな事項や技術的な質問が出るだけでした。
この会議の後、欧州側は日本側の態度に不満があると伝えてきました。日本側からはプロジェクトに対する熱意が感じられず、態度は横柄で、見下されているように感じたと言うのです。今後、日本側とコミュニケーションを続けることに難色を示しました。
ですが日本側に真意を確認すると、欧州側とのコミュニケーションには十分満足しており、話は順調に進んでいると思っていたのです。つまり、オンライン会議での物静かなコミュニケーションスタイルが誤解を生んでいたわけです。
我々はこのような状況によく遭遇します。双方ともイノベーションの可能性を秘めており、優れた相乗効果を発揮できる可能性があるにもかかわらず、コミュニケーションスタイルへの誤解から、プロジェクトが頓挫してしまうのです。
こうした事例を踏まえて提言したいのは、オンライン会議や在宅勤務が当たり前になった今こそ、自身が相手にどのような印象を与えているかについて注意を払うべきだということです。言葉でなくとも、好意を伝えることは可能です。
常にビデオをオンにする(相手の顔を見ずに話すのは不自然)、良質なWi―Fi環境下で臨む、というのは当たり前。カジュアルでも見栄えのよいものを着る。自宅から参加する場合は背景写真を使うなどして自宅の雰囲気を隠し、より多くのリアクションを見せ、相手に質問をし、興味を示す。さらに円滑な進行のために事前にファシリテーターを決め、打ち合わせをしておくべきです。
特にオンライン会議では、日本人の物静かな態度は誤解されがちです。これまで以上にビジュアルコミュニケーションのスキルを向上させ、熱意を持ってミーティングに臨むことが重要であると思います。
ウズベキスタン出身。サマルカンド国立外国語大学で英語・日本語言語学を修了。人材開発コンサルのSOPHYS(ソフィス)とグローバル事業開発支援のTrusted(トラスティッド)を東京で設立。
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