世界のワイン消費量の60%、世界のワイン生産地の45%、輸出の70%を占める欧州連合(EU)諸国では、伝統的なブドウ栽培においても、近年の環境や社会課題に対処するために変化が求められています。
今回は、伝統技術とテクノロジーの融合について、その効率性と品質の両面から考察します。
世界的な環境、社会問題はヨーロッパのワイン生産企業でも例外ではなく、環境問題から経済的、人的、技術的な問題まで、常にあらゆる課題に直面しており、伝統的なワイン産業であっても近代化を余儀なくされています。
有機農法やバイオ農法をブドウ畑で実践する生産者は増えている一方で、かなりの量のワインが工業的、機械的に大量生産されており、環境への脅威が懸念されています。
具体的には、除草剤、合成肥料、殺虫剤などの化学薬品農薬の使用や、機械による収穫から発生する燃料の排出など、環境負荷が高い化学物質、燃料の消費が問題となっています。
フランスのワイン業界は、この問題にいち早く取り組み、2025年までにこうした化学薬品や化石燃料の使用を50%削減することを公約しました。
それだけではありません。
ブドウ栽培は、主に地球温暖化、干ばつ、降水量の変化、土壌侵食などの気候変動の影響を強く受け、さらに、暑さは労働環境にも影響を与え、生産者は過酷な労働条件下で作業せざるをません。
社会課題解決とテクノロジー
収穫作業の機械化は、この問題に対する大きな解決策となります。
ブドウ園のロボットは、作業の難易度を下げ、作業時間を最適化し、収益性を高めることができます。
農業用ロボットのパイオニアであるフランスのNaïo Technologies 社は、完全電動・自律型ロボットを設計・開発・販売しており、農家の作業負担を軽減し、化学物質の投入を減らしています。
さらに、4G回線により現場から直接データが送信されるため、リアルタイムでの監視が可能となり、AIによる作業の進捗状況や品質の把握が可能になりました。
また、VitiBot 社は、雑草を自動的に除去し、除草剤の使用を削減する電動農業ロボットを設計しています。
このような最新テクノロジーを上手に活用することで、ブドウ栽培はよりサステナブルな方向へ移行することができます。
これだけではありません。ワイン業界は、特にCovid-19以降、マーケティング分野でも進化しVivino のようなラベルをスキャンするだけで銘柄の詳細、5段階での評価、平均価格、飲んだ人のレビューがわかる新しいアプリや、VIVANT のようなデジタルワインテイスティングプラットフォームなどのバーチャル体験のマーケットも拡大しました。
こうした企業は、意識の高い熱心な消費者と責任感の強いワインメーカーを結びつけ、ワイン産業の持続可能な未来に貢献することを目指しています。
伝統技術としてのワイン造り
そして、忘れてはならないのは、ワイン造りは生産者によるユニークな芸術であり、伝統技術であるという視点です。
自然との対話から生まれるこの芸術作品はたとえ同じ生産者、同じ畑のものであっても、毎年の気候により左右され、その違いを楽しむのがワインなのです。
たとえば実際に高級ワインはぶどうを手摘みします。
その理由は、職人が1房1粒ずつを確認することで、虫がついたものや腐食してしまったものを丁寧に取り除き、決して傷をつけることなく高品質のブドウの粒だけを集めることができるからです。
機械で一気に収穫することも可能ですが、虫や腐食した粒まで取り除くのは困難で、さらにこれを選り分けるために、センサーを導入するとなると、莫大な資金が必要となります。
よって、高級ワインを醸造しようと思えば、高品質と付加価値(ブランド)を保つために、職人の手に委ねた方が効率的だといえるでしょう。
今後の産業イノベーションにとって、最新テクノロジーは必要不可欠でしょう。しかし、決して自然や人間によるひと手間の付加価値を侵害してはならず、あくまで人の活動を助けるものであるべきだと考えています。むしろプロダクトアウトプットまでの過程において、人とテクノロジーの関わる度合いのバランスをうまくデザインしていくことこそ重要になると考えます。
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