日本の産業界では基礎研究の分野の停滞が議論されていますが、企業や大学、研究機関が面白いテーマのさまざまな研究開発に取り組んでいます。同時に日本企業が国内外のスタートアップ企業とのビジネス連携によってイノベーションの創出を目指す動きも加速しています。
一部の大手企業は自社のビジネスに必要な技術やソリューションを獲得するために、新規事業開発の担当部門に多くの予算とリソースを投入します。そして、世界中の有力ベンチャーキャピタルやアクセラレーター(スタートアップ企業の成長を支援する組織)に依頼して、それらの傘下または提携関係にあるスタートアップ企業をリストアップしています。
昨年、私は海外のスタートアップ・コミュニティーをいくつか訪問した際に、多くのスタートアップ企業の経営者たちと話す機会を持ちました。
私は経営者たちに、現在の日本においてスタートアップ企業がビジネス連携の相手として存在価値を高めており、これからビジネス機会が拡大していく見通しについて説明しました。
一例として最先端の技術力を活用した世界トップシェアの製品を持ち、日本では多くの人に知られている国内大手メーカーの名前を出してみました。
すると、ほとんどの経営者たちの反応は鈍いものでした。
もし、自社に世界中から事業提携の案件が来るならば、長い歴史を持つか否かを問わず、日本メーカーよりも知名度が高く、事業内容や開発テーマについて自分たちがよく知っている欧米企業との取引を優先するとのことでした。
ところが、私がその日本メーカーの研究開発の事例について説明すると、経営者たちは途端に関心を持ち始めました。
このことからもわかるように、海外のスタートアップ企業は総じて日本企業や日本のビジネス動向についての最新情報を持っていないようです。
私は日本企業がこのような状況を克服していくには、地理的、言語的制約を超えて積極的にグローバル市場に情報発信することが必要だと考えています。
海外の潜在的なユーザーやパートナー企業にアピールするには、その事業に関わる社内の
メンバー全員が英語のスキルや異文化理解に加えて、価値観の違う海外の人々の感情に訴え、興味や意欲を刺激するようなコミュニケーション手法を習得すべき段階にきていると考えます。
日本企業に所属するビジネスパーソンは、自社の製品やサービスの機能、事業内容についての理路整然としたプレゼンテーションは得意です。しかし、取り組んでいるプロジェクトへの誇りや熱意を相手に伝えることには慣れていないようです。さらにそれを英語で行うとなるとなおさらでしょう。
私は経営トップ以下のメンバーが様々なビジネスシーンでのショートスピーチやピッチを通して、自身が取り組んでいる分野やプロジェクトの意義について関心をもってほしいと世界に発信することが効果的だと考えます。
多くの日本企業はパッションを持って面白い事業開発に取り組んでいます。それを世界に発信し続けることができれば、やがて有望な海外スタートアップ企業の方からアプローチが来るでしょう。そうなれば、ビジネス連携における「インバウンド需要」が活発になるのです。
ウズベキスタン出身。サマルカンド国立外国語大学で英語・日本語言語学を修了。人材開発コンサルのSOPHYS(ソフィス)とグローバル事業開発支援のTrusted(トラスティッド)を東京で設立。
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