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伝統的企業のデジタルシフト

Trusted社長兼CEO ファリザ・アビドヴァ氏


日経産業新聞 ひと/エキスパート (14ページ)

2023/5/29 0:00

2023年になって人工知能(AI)を実装する波はIT(情報技術)分野のみならず、あらゆる産業に大きな影響を与えています。今回はこのような時代に変化が難しいといわれる日本の伝統的な製造業やハードウエア販売のデジタルシフトについて提言したいと思います。


最近よく日本の製造業の担当者から「販売を含めたデジタルシフトに苦慮している。海外の伝統的な製造業やハードウエア販売企業のデジタルシフトについて、その内部変革やマネジメントの事例を知りたい」という要望があります。

ITの進化に伴って製品のコモディティー化までのサイクルが短縮され、優れた製品であっても、すぐに価格競争にのみ込まれてしまいます。そこで企業は、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」やAIを搭載し、顧客にトータルソリューションを提供するサービスを次々と生み出しています。しかし既存の販売体制からのシフトに苦心している企業が少なくありません。

ここで紹介したいのが米国の重電大手ハネウェルの社内変革です。ハネウェルは1886年の設立で、主に航空やビルに電子制御システムを製造販売している巨大企業です。

ハネウェルのデジタルトランスフォーメーション(DX)は2016年に従業員にiPhoneとiPadを支給することからスタートしました。徐々に社内システムと連携し、19年に企業向けにクラウド経由でソフトウエアを提供するSaaSを販売したことをきっかけに社内が大きく変革しました。その前提にあるのは「我々がDXやSaaSのメリットを理解していない限り、製品を作って販売することはできない」「我々がまずモデルとなるべきだ」という経営層の信念でした。

まず着手したのが社内の業務効率改善です。販売・顧客・財務情報や在庫状況など主要なデータをすべて一元管理し、マネジャーが意思決定するためのデータをすぐに取得できるようにしました。また、販売面では工程を根本的に見直しました。インサイドセールスの活用や顧客との接点、ホームページの改善などで他社との差異化を進めました。 ソフトウエアに関連したハードウエア販売のための専門事業部も新設し、既存の営業部と協力して顧客にトータルソリューションを提供する体制を整えました。その結果、全売り上げの約4割をSaaSやソフトウエア、ソフトウエア関連機器の販売が占めるまでになったのです。

しかし当然会社の急激な変化に不満を持ち、退職者も少なくありませんでした。一方で、新たなステージへの進化を歓迎する従業員も多く、ハネウェル全体としての売り上げは堅調に推移しています。

製造業やハードウエア販売を手がけていた企業がデジタルソリューションプロバイダーとなるためには、第1にその企業自身が率先して実践するモデルとなり、DXの恩恵について理解することが大切です。DX研修を実施しても、伝統的な企業では電子契約に対応できていなかったり、属人的な営業スタイルだったりという事例も散見されます。

まずは積極的に自社のDXを進めて業務を効率化し、その恩恵を実感できるようにする――。そうすることで自社が扱うソフトウエアなどへの理解が深まり、販売のデジタルシフトも進むのではないでしょうか。


ウズベキスタン出身。サマルカンド国立外国語大学で英語・日本語言語学を修了。人材開発コンサルのSOPHYS(ソフィス)とグローバル事業開発支援のTrusted(トラスティッド)を東京で設立。


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