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スイスに学ぶ国際人材流動化


Trusted 社長兼CEO ファリザ・アビドヴァ氏

先日、国際通貨基金(IMF)の予測で2023年に日本の国内総生産(GDP)が世界3位から4位に転落する可能性があると報道されました。そうはいってもまだ世界のトップレベルです。一方、1人当たりのGDPでは22年が32位で20位のドイツと比べると生産性は7割程度にとどまります。また今年のIMD「世界競争力年鑑」をみても、日本は34位と、マレーシアやタイより下位にランキングされています。  GDPは為替の影響を受けますし、これらのランキングで国ごとの本当の経済状況を把握できるわけではありません。しかし日本のビジネスは非常に堅実で高品質であるにもかかわらず、どうして生産性や競争力が弱いとみられているのか。  この点について、1人当たりのGDPで世界4位、IMD「世界競争力年鑑」でも2位のスイスで戦略的な産官学連携エコシステムを訪問した体験をもとに考察します。  訪問して改めて実感したのは、どのチームも様々なバックグラウンドを持つ人材で構成されているということでした。出身地、育った国、性別、あらゆる面で多様であり優秀なことはもちろん、世界を巻き込む新たなイノベーションに積極的で情熱を持つメンバーによって構成されているのです。もちろん、海外からの人材の受け入れ、国際的流動化には各国の地理的、歴史的、政治的背景、事業的戦略もあることから、一概に推奨するつもりはありません。  ただ現実として、優秀な人材が、世界中からスイスに集まる理由はどこにあるのでしょうか。どのようにうまく受け入れ、同時に国家の経済発展に寄与させることができているのでしょうか。  スイス発展の背景には、体系的な強化産業ごとの戦略があります。歴史的に多民族国家であることに加え、世界中から優秀な人材を受け入れるためのビザや就労許可の制度が整備されています。さらに高度な研究開発を推進するための最新設備を備え、国際的な企業や研究機関との連携を強化しています。

その結果、戦略ごとに多様なバックグラウンドをもつ優秀な人材とグローバル企業、研究機関を世界中から集めることに成功しました。  異なる環境で育った人々が協力し合うことで最初からグローバルな視点で議論され、新たな視点や解決法を見つけ出すことができるのです。バックグラウンドによるささいな相違点は共通目的達成の中では自然淘汰され、多様性はイノベーション、開発スピードの源泉となり効率的であるといえます。  ただ、現実問題として今の日本企業がすぐに人材の国際的流動化に取り組むのは難しいでしょう。その場合、新規事業やプロジェクトの1つをスイス、ドイツなどの国際的にも戦略的にも注目度の高いエコシステムに持ち込むことを提案します。そこで多様なメンバーを募り、共同で推進してみるのです。実際、私たちにもこの手法に関する問い合わせが増えてきており、実行する企業も出てきました。  開発を最初から世界市場で推進できるだけではなく、優秀で多様なメンバーとのコミュニケーションによる共同開発という貴重な人材育成の機会にもなります。多様性の価値を引き出し、組織の成長を目指すことが、今後の日本企業の更なる発展へとつながるでしょう。

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